168.時の眠り
静謐な次元城
聖導師は 休むように伝えたし
ユリィーは 守護巡回や鍛練しているだろう
クロエは 部屋で休んでいることだろう
彼女は来たばかりだし
様子を見に行くのも いや憚られるな
そう思いつつも 何か気になって
部屋の扉の前まで来ている
視ようと思えば視れるのだが
やっぱりやめておこう
そう去ろうとしていた時
カチャ
扉が静かに開き クロエがふわっと出てくる
「うわぁ」
「あぁ 」
どちらも驚く
「ごめん 驚かせちゃったね」
「私こそ でも何故ここに」
「いや ちょっと気になって
来てみたんだけど やっぱり
休んでいるところで悪いなと思って
戻ろうとしていたんだ」
「そうなんですね
私は さきほどまでベッドで眠っていまして
おかげ様で ひさしぶりにたっぷり
寝てしまいました それで起きてみたら
誰もいないですし 部屋を出てみようかと 」
「そうだったんだね
ぐっすり眠れたのならよかった」
あれ ぐっすり眠れた って あれ
「 どうしたんですか」
「ううん これからどこかいくの」
「ユリィーさんや聖導師さんが
いるかなと思ってて 」
私は優しく頷きつつ
「でも次元城の外へは出ないでくださいね」
「はい ではまたあとで」
「はい またあとで」
クロエは城内を観覧しながら
歩いているようだ
私は疑問の思索をしながら
居室に戻る 椅子に腰かけ
UIを 展開する
部屋中に 視界中に ステータスウィンドウを
展開しまくってみた
ユリィーや聖導師では
そこまで気にしなかったが
さきほどの疑問 クロエはぐっすり眠れたと
言っていた 推測だが数時間は寝たという
感じで元気にいるのだろう でも
時刻のカウンターは いつも通りかなり遅い
つまりいくつかの仮説が混在することになる
一つ クロエも私と同じようになっている
一つ 時刻カウンターが壊れている
一つ クロエと私の時間経過が違う
パッと思いつくことで少なくとも
これらの仮説があるし
まだ他の仮説もありえるだろう
ふぅぅん
視界のUIを眺めてつつ 考え込む
無言になる
存在を支配する瞳は 闇を眠らす次元眼
ただ静謐な無言の私がいる