173.アリス・ペンドラゴン
浮遊城への 神聖術式は 無事完成している
ゆっくりと アーサーの娘さんのところへ向かう
状況把握や分析をおこないたいところだが
いま最優先にたいせつなのは 彼女のこころ
彼女は 泣き崩れ 半ば放心状態だ
私は片膝をつき 彼女にそっと話しかける
「私はクロノといいます
あなたを 愛する娘を 預かってほしいと
あなたの御父上に頼まれた者です」
彼女は 泣いている
すこし 見守る様に 間を十分に持つ
それはそうだ 今しがた 親と離れ離れに
なってしまった若い女性だ
困惑するのも 無理はない
優しく見つめ あせらずに彼女を待つ
次第に落ち着いてきたのか
「ありがとう 大丈夫 です」
言葉のところどころが
泣き声と 不安と 気丈さを ないまぜに
発している
心が強い娘だな と感心してしまう
間近でみると
金髪碧眼の美女だ さらに
意志をこめて どこか遠くを見上げる顔は
美貌と精悍さを宿して 輝いて見える
ふわっ
こちらに顔を向けてくる
魅力的な双眸だ
「わたくしは アリス・ペンドラゴンですわ
あなたのお世話になると思います
よろしくお願いしますね」
彼女は自分の名乗りをおこない
丁寧に挨拶してくれた
ステータスチェックはもうしていて
聞くことに徹していたが 名前はわかっていた
アリス・ペンドラゴン
称号には 神聖統継承者 とある
また かなりの称号持ちが 舞い込んできた
あといろいろステータスがあるが
レディへ 今これ以上の詮索は 控えよう
紳士でいなければならない のさ
「私も いきなりのことで
戸惑っていますが よろしくお願いします
アリス・ペンドラゴンさん」
すくっと立ち上がり 応えてくれた
「アリスで いいわ」
すこし元気になってくれている
私は 優しく頬がゆるんだ